-生けとし者も等しく儚く-



抱いてくださいって言った俺の手をあの人は跳ね除けた。

どうされてもいいですって言った俺の腕をあの人は強く引いて俺の後ろ髪を掴んで乱暴なキスをした。

あの方が亡くなって…土方さんの何かもどこかへ置き去りにされてしまったみたいで。
このところのあの人は以前のようでいて以前のようでない。
ふと、それを感じてしまうたびに切なくて。

強引に割り裂かれた歯と歯の間から吸い上げられた舌を、これでもかというくらい強い力で圧迫されてひっぱられる。

覚悟は出来ていた。
自分から、あんな事を、口に上らせた時点で。

どうしようもない。
切ない。
俺はこの人が好きだ。
たとえこの人が誰を好きでも構わない。
俺の劣情を押し付けるなんて野暮な真似はしないから、どうかあんたはあんたでいてくれ。
それが俺にとって本当に一番大事な事なんだってよくわかりました。痛切です。

何をされてもいい。
何をしたっていい。

今自分が助勤としても伽の者としても、傍にいられる事を幸せに思う。
同時にとても辛くも悲しくも。
あなたのそれには適わないだろうけど。
流れ込んでくると感じているのはこの山崎の錯覚ですか?

きつく、してほしい。
あんたが悲しかった分、あんたが叫びたかった分、あんたが伝えられなかった分。
あんたが愛した分。
哀惜を全部…とはいかないまでも僅かでも、この身に落としてくれたら俺は幸せです。

こんな時に不謹慎なのは重々承知です。だけど俺にはこんな方法しか思いつかなくて。
時が傷を癒してくれるというのなら、その時間を少しでも早めて差し上げたい。
自分に出来る事なんかたかが知れているのに。

加減を知らないからあっちこっち痛いのに。
抱かれ心地はふわふわと空を浮遊しているみたいです。
悲しい空です。
俺の声は絞められた鶏のよう。

真選組に預けたこの命。
心はあんたに捧げちまった。
あの方との事が無かった時にはもう戻れない。
俺も知らなかったつい数日前にすら戻れない。
でも、しようの無いお人だけど。

…やっぱり大好きなんです。