-泥情-



副長。


俺。
あんたに一つ、嘘ついてました。




副長。俺、万事屋の旦那と寝ました。


あなたが彼を気に留めているのに気が付いてから、俺もあなたと同じように彼を目で追っていたんです。

一つ、これだけは言わせてもらいたいのが、
俺はあなたと同じように彼を見ていたけど、俺はけしてあなたが彼を見るその目と同じ目で彼を見ていたわけじゃないんです。
いえ出来るならそうしたかった。あなたと同じ目を持って、あなたの気持ちに隅から隅まで同化して、それで見れる物を見たかった。
でもそんなの無理だから、ならば体でしている事をなぞってみれば、少しはわかるかと思って。

俺が見えてないのはあなたの本心ではないです。
俺が見たかったのはあなたが見に通う世界です。

あなたの目の中と同じ旦那を見てみて、納得したかったんです。


だから旦那に抱いてもらいました。

副長と同じようにって、彼にお願いしました。
口には出していないです。

何も言わずにしてくれました。
何も言わせてくれませんでした。


優しくしてくれましたよ。
すごく感じました。
あなたじゃない相手にああされるとどうなるかなんて、初めて知りましたよ。

男の人は生まれて二人目です。
もう他の人を知る事は無いと思います。


とても気持ちよかったけど、俺は何も得られなかった。


男二人を入れてくれるホテルなんて無かったから、旦那の家でしました。
副長も…
そう思うと布団に射す西日のオレンジが急に悲しくなったけど…
旦那は人が泣く顔を見るのが好きじゃないらしい。
すぐに気配を察知され感傷が消えるほど激しく突かれました。


副長に知られたらってびくびくしていました。
旦那が言ってしまったらどうしようって。

今あの時間を思い出しても息が止まりそうです。

でも旦那はそんな人じゃない。なかった。
だから俺さえ言わなければ一生副長は知らない。
秘密として守り通せる。


一度だけです。
あんなに自分が自分じゃなくなるのは、一度で充分です。


これをやり過ごせば副長が知る事は一生無い。



そう思うと…もう言わなくては。
いてもたってもいられなくて…



聞いてますか?



そんな顔しないでください。


あの人はあの人で、とても巧いんだと思います。
でも、それはひどくぞんざいにされているのと、よく似ていました。
荒々しさも全部筋書きの上でした。
預かり物みたいに扱われて、全部お見通しだって事がよくわかりました。
ますます副長から見える彼が遠くなりました。




副長。






……









全部嘘です。