-Roses are red,Violets are blue.Sugar is sweet,So are you.-



樋を、せせらぐ雨は、季節がもう芽吹く若葉の物だけではないという事を告げる。
蝶。花。生まれる喜び。生きる喜び。死へのそまりじ。再生する喜び。


青紫の花塊の上で目を出す蝸牛。片方瞑る。目。


セックスで頂点に向かって高揚するのは、死ににいく時のあの妙な興奮に似ている。
一瞬の絶頂は命が砕けるのに似ているんじゃないかと思う。
噴き出す血のように迸る精。蘇生のある小さな死。
それがあるか無いかで随分と違ったものだが。

昔、奴がそう言った。
まだ両目のカタツムリだったころ。
皮肉りながらも再生の喜びを語った。

無くした側の世界もまだ、見る事が出来ていた頃。


大地に恵みをくれてやる雨。利点なんてなーんにもねえのにな。
それがただ一方的な恩恵大サービスってわけじゃなく、自然の摂理による循環だって事ぐらいは知ってる。
俺らが生きてる世界を、潤してくれる雨は、俺らみたいな末端には時にウザく。蝉の声を閉ざし。

でもこの雨が無ければ、死んでしまうだろう。
そうでなくても無条件に生まれて無条件に死ぬけど。

けど。
降り続けてくれ。
どこかであいつが生きている、この世界が枯れないように。
やがてくる悲しみを、せめて綺麗な空気の中で迎えられるように。

いきとしいけるはただひとたび。
あるヒトは、狂い咲き生き急ぐ。苦を踏み。足を泥に染めながら。

その苦しみが終わる時まで、地を潤していて雨よ。


長雨が去れば、照りつける光が砂を焼く、今度はそんな季節がくる。
生んだ児達にふんだんに、次の恵みを浴びせ。

奴の見えなくなった半分の世界に、どちらかと言えば今俺は居る。
美しいこの世界。右も左も空は同じだ。



俺は種を貰う。
よく種子を実らせる物を一粒。

俺は花を植える。
笑うだろうか。
たくさんの種を落としてくれるから、咲くたびに花は増えるだろう。
あまり手の掛からない花だから、もし俺が死んでも、その後も広がり続けてくれると思う。
とても強くて、したたかで、美しい花だ。

お前も気に入ってくれるだろうか?


ばらはあかく、すみれはあおく…


きっと気に入ってくれるだろう。

やがてお前も還る。
その場所も花で埋められたら。
二人そこが何処になるかはわからないから。

世界中を。

どこで果ててもお前と居られるように。


また。笑うだろうか。


灰色コンクリートを這う蝸牛。
けど神は天高く、其処に居て。全ておわかりでいらっしゃる。全て此の世は事も無し。

あんたはなんの干渉もしない。つうのに、時に恨まれてお気の毒様だ。

俺は、もし…。殺意を持って問うだろう。
どうして同じ時代に生み落としたのか。
会う事も無ければ触れ合う事も無く、離れる事も触れられなくなる事も無かった。
どんなに近くに居ても距離なんか存在しなかっただろう、今とは真逆の意味で。
お前の出てこない人生なんて、ちっと味気が足りねぇな。


俺はでも、感謝する。

昔奴は。俺がこの世にひり出された日だ。そんな言い方しながらクスクス笑った。

ありがとう。


お前がこの世界のどっかで生きてる事を。俺はいつか、続く日々のデザートに。

空は高く、過去は遠く。この思いは苦い…
そう、きみ も




なあ、高杉。今日やっと、蕾が吹いた。

お誕生日おめでとう。






タイトルはマザーグースより。
『薔薇は赤い、菫は青い。 砂糖は甘い、また君もそうだ。』
内容の蝸牛のくだりは有名らしき文より…ですが、確かな原文と作者はわかりませんでした。
『かたつむり枝に這い 神空にしろし召す な(す)べてこの世はこともなし』というような文です。

ポエムなのは重々…(笑)

私からもおめでとう!